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借金・ローンの相続調査完全ガイド:信用情報(CIC)開示と相続放棄

「親の借金を背負いたくない」。隠れた借金の探し方(CIC/JICC/KSC)、住宅ローン団信の適用可否、そして3ヶ月という期限内に決断すべき「相続放棄」の判断基準。

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相続は「プラス」だけではない

遺産相続の現場で最も悲惨なケース。それは、預金が入ると喜んでいた遺族が、蓋を開けてみれば「預金よりはるかに多い借金」が見つかり、生活が破綻するパターンです。

「父は真面目だった」「借金なんてあるはずがない」 その思い込みこそが最大のリスクです。現代社会では、カードローン、リボ払い、スマホの分割払い、連帯保証人など、本人が意識していない「隠れ負債」が家計に潜んでいます。

本記事では、故人の借金を徹底的に洗い出す「調査手法」と、借金から逃れるための「相続放棄」のデッドラインについて解説します。


1. 借金の種類別対応:消える借金、残る借金

まず、全ての借金が相続されるわけではありません。「消える(無くなる)」ものもあります。

① 住宅ローン(団体信用生命保険)

多くの住宅ローンは、契約者が死亡すると「団体信用生命保険(団信)」によって保険金が下り、ローンの残債がゼロになります。

  • Action: 銀行へ死亡診断書を提出し、弁済手続きを行います。これにより、家は「無借金の優良資産」として相続できます。
  • 注意: 団信に入っていないフラット35の一部や、告知義務違反で保険が下りないケース、滞納によって団信が失効しているケースでは、ローンがそのまま相続されます。

② 事業用ローン・カードローン・リボ払い

これらは原則として全額相続されます。 法定相続分(妻1/2、子1/2など)に応じて、支払い義務が自動的に割り振られます。

③ 連帯保証債務

最も恐ろしいのがこれです。 故人が「友人の借金の保証人」になっていた場合、その保証人の地位も相続します。主債務者が飛べば、ある日突然、数千万円の請求があなたに来ます。信用情報機関にも載らないことが多く、発見が困難です。


2. 借金の調査方法:3つの信用情報機関(ブラックリスト)を開示せよ

机の引き出しを探すだけでは不十分です。 金融機関が共有しているデータベース、いわゆる「信用情報」を強制開示請求します。これは相続人の正当な権利です。

3つの機関と守備範囲

日本には3つの信用情報機関があります。できれば全て、最低でもCICとJICCは開示すべきです。

  1. CIC(シー・アイ・シー):クレカ系
    • クレジットカードのリボ払い、スマホの分割払いなど。
    • 開示方法:郵送または窓口(現在はスマホで開示できる場合もあり)。
  2. JICC(日本信用情報機構):消費者金融系
    • アコム、プロミス、レイクなどの借入情報。
    • 開示方法:公式アプリからの申請が便利です。
  3. KSC(全国銀行個人信用情報センター):銀行系
    • 銀行のカードローン、住宅ローン情報。
    • 開示方法:郵送のみ。定額小為替が必要です。

調査のポイント:「成約残高」を見る

開示報告書が届いたら、見るべきは「残債額」「成約残高」の欄です。また、「異動(ブラックリスト入り)」の情報があれば、長期滞納による遅延損害金が膨れ上がっている可能性があります。


3. 相続放棄という「緊急脱出装置」

調査の結果、明らかに「預金 < 借金」である場合、あるいは「連帯保証のリスクが怖い」場合。 唯一の回避策が「相続放棄」です。

究極の選択:3つの道

  1. 単純承認: 預金も借金も全て引き継ぐ。(何もしなければこれになる)
  2. 相続放棄: 初めから相続人ではなかったことになる。借金は1円も払わなくて良いが、実家の土地も思い出の品も全て手放す。
  3. 限定承認: 「プラスの財産の範囲内でのみ」借金を返す。手続きが極めて複雑で、全員の合意が必要なため、実務ではあまり使われません。

🚨 絶対期限:3ヶ月ルール

相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時(通常は死亡日)から3ヶ月以内」に、家庭裁判所へ申し立てなければなりません。 3ヶ月を1日でも過ぎると、自動的に単純承認(借金完済コース)となります。 借金調査に時間をかけすぎてはいけません。


4. やってはいけない「法定単純承認」の罠

「相続放棄しよう」と決めた後に、うっかりやってしまうと放棄が無効になるNG行動があります。 これを「法定単純承認」と言います。

💀 NG行動リスト

  • 預金の引き出し・使用: 故人の預金を自分の生活費に使った。
  • 形見分け以上の遺品整理: 高価な貴金属を売却した、車を名義変更した。
  • 借金の一部返済: 催促に来た業者に「とりあえず1万円だけ」払った。
  • 家賃収入の受取: アパート経営をしていた父の家賃を自分の口座に入れた。

これらは全て「相続財産の処分」とみなされ、「相続する意思あり」と判断されます。 放棄が受理された後でも、債権者から「あなた、あの時時計を売りましたよね?だから放棄は無効です。全額払ってください」と訴えられるリスクがあります。


5. まとめ:マイナスからのスタートを防ぐ

借金の相続は、残された家族の未来を奪います。 プラスの財産(預金解約)は10ヶ月後でも間に合いますが、マイナスの財産(放棄)は3ヶ月が勝負です。

「親に限って...」という感情を一旦捨て、クールに信用情報開示を行うこと。 それが、あなたとあなたの家族の生活を守るための、最初の義務です。

借金のチェックが終わったら、次は「放棄する」か「承認する」かの最終決断です。 より具体的な判断基準と手続きについては、相続放棄の判断(Article 16) で深掘りします。

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相続のプロ
解説をお読みいただきありがとうございます!
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