ポイントは「おまけ」ではなく「資産」である
かつてプラスチックのカードにスタンプを押していた時代とは違い、現代のポイントは「1ポイント=1円」の価値を持つ、流動性の高い準通貨(デジタル資産)です。
特に「ポイ活」を積極的に行っていた故人の場合、数十万ポイント(数十万円相当)がアカウントに残っていることも珍しくありません。 しかし、銀行預金と違って法的な保護が薄いため、遺族が何もしなければ、これらは全てデジタルの藻屑として消滅します。
本記事では、主要なポイントサービスの規約を読み解き、「いかにしてポイントを救出するか」のテクニックを解説します。
1. 厳しい現実:規約の「死亡=失効」ルール
まず、残酷な原則を知っておく必要があります。 多くのポイントプログラムの利用規約には、以下のような条文があります。
「会員が死亡した場合、会員資格は失効し、保有するポイントも全て消滅する。相続人は一切の権利を主張できない。」
これに基づき、楽天ポイントやVポイント(旧Tポイント)などは、原則として相続不可です。 電話で「父が死んだのでポイントを移してください」と正直に言えば、「お悔やみ申し上げます。では、処理(削除)させていただきます」と即座にゼロにされてしまいます。
なぜ相続できないのか?
企業側の理屈としては、「ポイントはあくまで個人への景品(サービス)であり、財産権ではない」という立場です。 これを法的に覆すのは現状困難です。
2. 救済されるポイント(相続可能なホワイトリスト)
一方で、資産性を重視し、所定の手続きを行えば相続を認めるサービスも増えています。
① JALマイル / ANAマイル
- 判定: ○ 相続可能
- 条件: 死亡から6ヶ月以内などの期限あり。
- 手続き: 戸籍謄本などを提出すれば、法定相続人のマイレージ口座に合算してくれます。
- 詳しくは 航空マイレージの相続(Article 26) 参照。
② dポイント(ドコモ)
- 判定: △ 条件付き可能
- ルール: ドコモの携帯電話回線を相続(承継)する場合、その回線に紐付いているdポイントも引き継げます。
- 注意: 回線を「解約」してしまうと、ポイントも消えます。ポイントを救いたいなら、一旦名義変更(承継)をして、ポイントを使い切ってから解約するのが鉄則です。
③ Pontaポイント
- 判定: ○ 相続可能
- 規約: 「会員が死亡した場合、法定相続人は所定の手続きによりポイントを承継できる」と明記されている稀有な存在です。
- アクション: Pontaカスタマーセンターへ連絡してください。
④ 証券会社のポイント(Vポイント投資など)
- 判定: ○ 相続対象
- 理由: 証券口座に入っている投資信託(ポイントで購入したもの)は、ポイントではなく「有価証券」なので、当然に相続財産として保護されます。
- 未投資分: まだ投資に使っていないVポイント残高は、原則失効となります。
方法C:ポイント支払いでの公共料金精算
- 溜まっているポイントを、最後の電気代やガス代の支払いに充当する。
- 「債務の弁済」にあたるため、保存行為として正当化しやすい手段です。
4. 相続税との関係:課税されるのか?
「ポイントは税金がかかるの?」 この問いへの国税庁の明確な回答(通達)はまだありませんが、実務上の運用は以下の通りです。
| ポイントの種類 | 課税の有無 | 理由 |
|---|---|---|
| 一般的なポイント | 原則非課税 | 値引きクーポンの一種とみなされ、経済的価値が低い。 |
| マイル(大量) | 要検討 | 換金性が低いが、相続財産として評価される場合も。 |
| 電子マネー(PayPay等) | 課税 | 現金同等物(資金移動業)として、預金と同じ扱い。 |
| 投資用ポイント | 課税 | 株式・投信として評価額に算入される。 |
結論: 数千ポイント程度なら無視して構いませんが、電子マネー残高や投資残高は1円単位で申告が必要です。
5. 【FAQ】ポイント相続の現場Q&A
Q. 楽天カードの家族カードを持っています。本会員(夫)のポイントは使えますか? A. 微妙です。 「家族でポイントを共有」する設定にしていれば、家族カード会員の画面からもポイントが見え、使える場合があります。しかし、本会員が死亡した事実をカード会社に告げると、その瞬間に共有機能もロックされます。スピード勝負です。
Q. Tポイントカードが見つかりましたが、Yahoo! IDがわかりません。 A. 物理カードがあれば使えます。 街のお店(ファミマ等)で、物理カードを出して「ポイントで払います」と言えば使えます。ただし、Web上で手続きが必要な場合はID必須です。
Q. Amazonギフト券(チャージ残高)はどうですか? A. 相続不可です。 Amazonの規約は非常に厳しく、アカウントの譲渡・貸与を禁じており、死亡時の承継規定もありません。残高が残っていても、法的には放棄せざるを得ません(が、ログインできるなら買い物をして使い切るのが実情です)。
6. まとめ:規約の壁は高い
ポイントは、企業が顧客を囲い込むための「サービス」であり、法的な「財産権」としては脆弱です。 「もったいない」という気持ちは痛いほどわかりますが、以下の優先順位を忘れないでください。
- 借金がないか確認する(ポイントを使うと放棄できなくなるため)。
- 規約を確認する(Pontaやdポイントなら正規ルートで堂々と相続)。
- どうしようもない場合(楽天など)は、少額なら諦めるか、自己責任で日用品に変える。
ポイントよりも、もっと確実に権利が守られているのが「マイル」です。 特にJAL/ANAは遺族への配慮が行き届いています。 次は、 航空マイレージの相続手続き(Article 26) へ進みましょう。