マイルは「空の預金」である
「父は出張族で、マイルがたくさん貯まっているはずだ」 そう思ってJALやANAのサイトを見ても、「相続」のボタンはどこにもありません。 焦ってコールセンターに電話すると、「ご愁傷様です」と言われながら、実は非常にシビアな「期限」を通告されます。
ポイント系資産の中で、明確に「相続手続き」が制度化されているのが航空会社のマイル(マイレージ)です。 10万マイルあれば、家族でハワイに行ける価値(数十万円相当)があります。これをみすみすドブに捨てる必要はありません。
本記事では、国内・海外の主要航空会社の相続ルールを網羅し、期限内にマイルを救出するための完全ガイドをお届けします。
1. 航空マイルの「例外」:唯一、権利が保証されているポイント
一般的なポイントサービス(楽天、Vポイントなど)が「死亡=権利消滅」を原則としているのに対し、航空会社のマイル(JALマイレージバンク、ANAマイレージクラブ)は、「法定相続人への承継」を公式に認めています。 これは、マイルが単なる「おまけ」を超えて、将来の航空券という「債権」に近い性質を持っているからです。
[Expert View] なぜマイルだけ相続できるのか?
- 国際的な慣習: 海外の航空会社(マイレージプログラム)の多くが、会員の死亡に伴うマイルの移転や利用を認めており、日本の航空会社もその国際基準に合わせています。
- 資産価値の高さ: 1マイル=2円〜5円(国際線ビジネスクラス換算なら10円以上)という高い価値を持つため、これを一方的に消滅させることは顧客ロイヤリティの観点からもマイナスだからです。
2. JAL・ANA・海外:相続対応コンプリート表
ここが最重要です。会社によって「期限」と「費用」が異なります。
| 航空会社 | 相続の可否 | 申請期限 | 手数料 | 移管先 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| JAL (日本航空) | ◎ 可能 | 死亡から6ヶ月以内 | 無料 | 法定相続人のJALマイレージ口座 | 合算には、受取人もJAL会員である必要あり。 |
| ANA (全日空) | ◎ 可能 | 死亡から6ヶ月以内 | 無料 | 法定相続人のANAマイレージ口座 | 故人のマイル有効期限をそのまま引き継ぐ。 |
| Delta (デルタ) | × 原則不可 | - | - | - | 規約上、死亡とともに口座閉鎖・マイル消滅。 |
| United (ユナイテッド) | △ 有料 | 1年以内 | $150〜 | 相続人の口座 | 移行手数料+処理費用がかかるため、少額だと赤字。 |
| British Airways | × 不可 | - | - | - | 死亡時は全マイル没収。救済措置なし。 |
⚠️「6ヶ月の壁」に注意
JALとANAは非常に親切ですが、「死亡後6ヶ月以内」というデッドラインは厳格です。 これを1日でも過ぎると、システム上ロックがかかり、いかなる理由があっても承継できなくなります。 銀行の手続き(10ヶ月以内でOK)と同じ感覚で後回しにしていると、確実にアウトになります。
3. 上級会員ステータス(JGC/SFC)は相続できるか?
故人が「JALグローバルクラブ(JGC)」や「ANAスーパーフライヤーズカード(SFC)」といった、いわゆる「上級会員(修行僧)」だった場合、その特権ステータスはどうなるのでしょうか?
原則:ステータスは「一代限り」
「JGC本会員」の資格は、本人が死亡した時点で消滅します。 いくら子供がマイルを引き継いでも、JGCのステータス(ラウンジ利用権など)までは引き継げません。
⚠️ ステータス(SFC/JGC)の消滅について
マイルは相続手続きを行うことで引き継げますが、SFC(スーパーフライヤーズ)やJGC(JALグローバルクラブ)などの会員ステータス(資格)は、本会員の死亡と同時に消滅し、相続することはできません。
- 家族カードも解約: 本会員が死亡・退会となった時点で、紐づく家族カードも自動的に効力を失います。
- 新規取得が必要: 残されたご家族がステータスを希望する場合、ご自身で新たに当該カードの入会条件(プラチナステータス獲得など)を満たし、新規申し込みを行う必要があります。
4. 具体的な手続きフロー(ANAの場合)
Web上には申請フォームはありません。アナログな手続きが必須です。
Step 1: 故人のマイル残高確認
会員カードが見つかれば、Webサイトでログイン(パスワードがわかる場合)するか、コールセンターで確認します。
- もし残高が1,000マイル程度なら、手間賃(戸籍代など)で赤字になるので、手続きせずに放置するのが合理的です。
- 目安として1万マイル以上あれば、手続きする価値があります。
Step 2: コールセンターへ電話
「ANAマイレージクラブ・サービスセンター」へ電話し、「会員が亡くなったのでマイルを相続したい」と伝えます。
- これを行わないと、申請書類が送られてきません。
Step 3: 公式書類の提出
郵送で届いた申請書に記入し、以下の書類をセットで返送します。
- 退会・マイル承継申請書: 署名・捺印。
- 死亡の事実がわかる書類: 死亡診断書のコピー、または除籍謄本。
- 相続人の証明書: 戸籍謄本。
- 故人のマイレージカード: 裁断して返却(紛失時は申請書に記入)。
Step 4: 口座への合算完了
約2〜3週間で、相続人(あなた)のANA口座に、故人のマイルが加算されます。 マイル口座通帳の摘要欄には「相続による調整」といった記載が残ります。
5. 相続したマイルの「賢い使い道」と延命術
受け取ったマイルには、故人が獲得した時点での「元の有効期限」が付いています。 「来月切れるマイル」を大量に相続してしまった場合、どうすればいいでしょうか?
テクニックA:SKYコイン・e JALポイントへの交換(即効薬)
マイルを「航空会社専用の電子マネー」に交換します。
- ANA SKY コイン: 1マイル=1円〜1.7円相当。有効期限は交換から12ヶ月後に伸びます。
- e JALポイント: 1マイル=1円〜1.5円相当。有効期限は交換から12ヶ月後。
- メリット: 即座に期限がリセットされるため、失効を回避できます。航空券やツアー代金の支払いに10円単位で使えます。
テクニックB:事前の「ファミリーマイル」活用
もし故人が生前に「家族カード会員」や「ファミリーマイル」に登録していた場合、実は面倒な相続手続きをせずに使える可能性があります。
- ファミリー合算の範囲内であれば、故人のマイルを使って家族が特典航空券を発行することは、規約上グレーですが、システム的には可能です(※ただし、死亡後は速やかに退会するのが本筋ですので、推奨はできません)。
テクニックC:未使用航空券の払い戻し
故人が予約・発券済みだった「特典航空券」は、死亡診断書を提出することで**「マイル口座への払い戻し」が可能です。 通常かかる払戻手数料(3,000マイルなど)も、死亡事由であれば免除**されます。必ず「手数料免除でお願いします」と申告してください。
6. 【FAQ】マイル相続の現場Q&A
Q. 私(相続人)はANA会員ではありません。それでも相続できますか? A. できません。 マイルは「会員の口座」にしか移せません。まだ会員でないなら、大急ぎでANAマイレージクラブ(無料)に入会し、お客様番号を取得してから申請してください。
Q. 複数の相続人でマイルを分けることはできますか? A. 原則、代表者1名の口座に全額移行します。 例えば「兄に5万マイル、弟に5万マイル」といった分割送金機能はありません。 兄が10万マイルを受け取り、弟には現金(5万円など)を渡して精算する「代償分割」の形をとるのがスムーズです。
Q. 相続税はかかりますか? A. グレーゾーンですが、一般的には非課税扱いが多いです。 マイルは換金性が低く、国税庁も明確な評価基準(1マイルいくらか)を示していません。 常識的な範囲(数万〜数十万マイル)であれば、相続税の課税価格に算入しないケースが大半です。ただし、100万マイルを超えるような、金銭換算で数百万円規模になる場合は、税理士に相談してください。
7. まとめ:空の資産は時間との勝負
マイルの相続手続きは、意外とアナログで時間がかかります。 「6ヶ月」という期限は、遺産分割協議で揉めているとあっという間に過ぎてしまいます。
- カードを探す。
- 残高を確認する。
- 1万マイル以上なら、すぐにコールセンターへ電話する。
このステップを、四十九日の法要が終わる頃までに完了させてください。
空のポイントが片付いたら、次はさらに見えにくく、放置されがちなネット上の資産。 ポイ活サイト・アフィリエイト報酬の相続(Article 27) で、埋蔵金の発掘に進みましょう。