その数万円、サーバーの中に置き忘れていませんか?
「父のパソコンを開いたら、ポイントサイトのブックマークが大量にあった」 近年、副業ブームにより「ポイ活(ポイント活動)」や「アフィリエイト(広告収入)」を行っている個人が急増しています。
これらは銀行預金と違い、通帳もなければ、自宅に明細書が届くこともありません。 しかし、アカウントの中には「換金前のポイント」や「未振込の報酬」として、数万円〜数十万円の現金同等物が眠っているケースがあります。
本記事では、主要なポイントサイト・ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)の相続対応状況と、これらを発見し承継するためのデジタル・フォレンジック術を解説します。
1. ポイントサイトの相続:規約の壁と現実的な活用法
まず、お小遣いサイト系(ポイントサイト)の現状です。 これらは企業によって対応が真っ二つに分かれます。
主要サイトの相続対応リスト
| サイト名 | 運営会社 | 相続規定(規約) | 実務上の対策 |
|---|---|---|---|
| モッピー | (株)セレス | × 不可 | アカウント削除前なら、Amazonギフト等に交換して救出する例あり。 |
| ハピタス | (株)オズビジョン | × 不可 | 原則、死亡によりポイント失効。 |
| ポイントタウン | GMOグループ | × 不可 | GMOポイントに統合されている場合、規約上不可。 |
| ECナビ | (株)DIGITALIO | × 不可 | Pex経由での換金を含め、本人限定。 |
| ちょびリッチ | (株)ちょびリッチ | × 不可 | 死亡時の権利消滅を明記。 |
[Reality] 規約上は「全滅」だが...
ご覧の通り、ポイントサイト系は規約上「相続=失効」が基本です。 正面から問い合わせても断られます。 しかし、もし「ログインできる状態」であれば、遺族ができる実質的な利用手段(※自己責任のグレーゾーン)があります。
- 「換金」の申請: 故人の銀行口座がまだ凍結されていない場合、ポイントを現金化して口座に振込依頼をかけます。口座に入ってしまえば、それは「預金」として正規に相続できます。
- 「ギフト券」への交換: 口座が凍結されている場合、Amazonギフト券やnanacoギフトなどの電子コードに交換し、そのコードを控えておきます。
- 「ポイント交換ハブ」への待避: 複数のサイトに散らばっている場合、「PeX」や「ドットマネー」といった中継サイトへポイントを集約させる手があります。そこから一括で銀行振込やdポイント(相続可能)へ変換することで、資産の分散・消滅を防げます。
2. アフィリエイト報酬(ASP)の相続:こちらは「権利」がある
一方、ブログやWebサイト運営で得られる「アフィリエイト報酬」は、法的性質が異なります。 これは労働や成果に対する対価(債権)であり、明確な「事業上の資産(売掛金)」です。 したがって、ASP各社は法的に相続に応じる義務があります。
主要ASPの対応
| ASP名 | 運営会社 | 相続対応 | 必要なアクション |
|---|---|---|---|
| A8.net | ファンコミ | ◎ 可能 | 手続き書類の提出で、指定口座への残高振込が可能。 |
| ValueCommerce | バリューコマース | ○ 可能 | 問い合わせフォームから個別申請。 |
| AccessTrade | インタースペース | ○ 可能 | サイト運営権ごと相続(名義変更)も相談可。 |
| Amazonアソシエイト | Amazon | △ 困難 | アカウント譲渡不可の規約が厳しいが、未払い分の精算は交渉余地あり。 |
| Google AdSense | △ 困難 | 8,000円以上の未払い残高がある場合、閉鎖精算。アカウント承継は不可(法人化していない場合)。 |
手続きの流れ(A8.netの例)
- 問い合わせ: サポートへ「メディア会員が死亡した」と連絡。
- 書類提出: 除籍謄本、相続人の本人確認書類、振込先口座。
- 精算: 未確定速報の分も含め、確定した報酬が全額振り込まれます。
- 退会: 報酬受取と同時に、サイト登録は解除(退会)となります。
3. 「隠れ資産」を発見する4つのデジタル調査テクニック
故人がポイ活をしていたかどうかわからない。 そんな時は、パソコンとスマホに残された「痕跡」を辿ります。
① ブラウザの「パスワード保存」を見る
最も確実な方法です。
PCのGoogle Chromeを開き、設定 > 自動入力 > パスワードマネージャー を見ます。
moppy.jpa8.nethapitas.jpこれらが保存されていたら、IDとパスワードを表示させ、ログインを試みてください。
② メールの検索
メールソフトで以下のキーワード検索をかけます。
- 「ポイント確定」
- 「成果発生」
- 「交換完了」
- 「振込」 これでヒットしたメールの送信元が、契約しているサービスです。
③ 銀行通帳の「振込依頼人名」
通帳に、頻繁に少額(数千円〜数万円)の入金がある場合、その依頼人名をチェックしてください。
- 「カ)セレス」 → モッピー
- 「カ)ファンコミュニケーションズ」 → A8.net
- 「ラクテンギンコウ」 → 楽天アフィリエイト等
- 「グーグル(ド」 → AdSense
④ 余談:仮想通貨(暗号資産)の可能性
最近のポイ活サイト(ポイントタウン、マクロミルなど)は、ポイントをビットコインで受け取れる機能があります。 ポイント履歴に「bitFlyerへ交換」「Coincheckへ送金」といった履歴があれば、そこには更に大きな資産(仮想通貨)が眠っています。ビットコインは相続財産として非常に重要です。 仮想通貨の相続(Article 32) で秘密鍵の探し方を確認してください。
4. 税金の話:準確定申告が必要になるライン
ポイ活やアフィリエイトの収入は、税法上「雑所得」または「事業所得」になります。 故人が亡くなった後、相続人はこれらを計算して、「準確定申告(4ヶ月以内)」をする必要があります。
申告が必要なケース
- 本業(給与所得)がある場合: 副業所得(ポイ活+アフィリ等)が年間20万円を超えている場合。
- 年金受給者の場合: 年金以外の所得が20万円を超えている場合。
- 専業(個人事業主)の場合: 金額に関わらず申告が必要。
計算のポイント
- 収入: 死亡日までに「確定」しているポイント・報酬全額。
- 未収金: 死亡時点で「未確定」であっても、成果が発生していて後に確定した分も、相続財産として計上します。
- 経費: 通信費、PC代、サーバー代など、活動に要した費用を引けます。
5. まとめ:数百円は捨て、数万円は拾う
ポイ活資産は、手続きの手間(ログイン、問い合わせ、書類郵送)に対して、金額が見合わないことが多いです。
- 残高 500円: 手続きは不要です。
- 残高 10,000円: ログインできるなら、ギフト券に替えて受け取りましょう。
- 残高 100,000円: 書類を揃えてでも、ASPに正式請求すべきです。
デジタル遺品整理において重要なのは、「完璧を目指さない」ことです。 大きな石(銀行、証券)を拾い、ポイ活のような小石は、余力があれば拾う。 そのバランス感覚が、遺族の疲弊を防ぎます。
次は、小銭ではなく「本格的な資産運用」の壁。 パスワードがわからないと何もできない ネット証券(SBI・楽天)の相続手続き(Article 28) へ進みましょう。