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デジタルサブスク(Netflix・Spotify等)の解約:パスワード共有と法的整理

映画、音楽、DAZN。故人のアカウントを使い続けるのは規約違反?パスワード不明時の解約フローと、放置した場合のクレジットカード請求停止措置について。

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1. 「永遠の課金」を止める:デジタル・サブスクリプションの恐怖

現代の生活は、物理的なインフラ(電気・ガス・水道)と同じくらい、目に見えない「デジタル・インフラ」に支えられています。 Netflix、Spotify、Amazon Prime、YouTube Premium、DAZN、Apple One...。 これらはすべて、本人がいなくなった後も、クレジットカードやスマホ決済が生きていれば、「永遠に課金」を続ける自動更新プログラムです。

故人の銀行口座は凍結されても、クレジットカードはカード会社が「死亡情報」を受け取るまで(数ヶ月〜半年)は動き続けることがよくあります。 その間、何のサービスも受けていないのに、月額数万円が幽霊のように流出し続ける——これが「デジタル遺産」の最初の罠です。

[Expert View] サブスク解約の「急所」はクレジットカード

IDやパスワードがわからないサブスクを一軒ずつ解約して回るのは、非常に困難です。故人はパスワード管理アプリにロックを掛けているかもしれません。

  • 兵糧攻め(強制停止): 最も確実かつ効率的な方法は、クレジットカードの停止(Article 24) です。
  • 仕組み: 決済元のクレジットカードが「利用停止(紛失・盗難・死亡)」または「無効」になれば、NetflixもAmazonも決済エラーを起こします。数回のリトライの後、サービス側は自動的に「有料会員資格の停止(無料プランへのダウングレード)」処理を行います。
  • 特効薬: つまり、カードさえ止めてしまえば、個別の解約手続きは(後述する例外を除き)不要になるのです。

2. 【Case Study】「見えない固定費」の月額3万円をカット

[Case Study 1] クレジットカード解約で「一括停止」に成功した事例

父は多趣味で、多数の有料アプリやサブスクを利用していたが、パスワードは一切不明。相続人は個別の解約を諦め、四十九日を待たずに父の三井住友カードとJCBカードへ死亡の連絡を入れ、カードを無効化した。

  • 結果: その後1ヶ月以内に、家のアマゾンプライムや新聞のデジタル版などが順次「お支払い方法に問題があります」というメールとともに停止。「元栓(カード)を締める」ことで、月額合計で約1万5,000円の無駄な流出を、労力ほぼゼロで止めることが### [Case Study 2] 故人のアカウントを使い続け「BAN」された事例 父が契約していたDAZN(スポーツ配信)を、解約せずに父のアカウントのまま使い続けていた。「どうせなら視聴履歴も引き継ぎたい」と考えていた。
  • 結末: 半年後、アカウントの不審な動き(別端末からのログインなど)を検知した運営側がアカウントを凍結。復活させようとサポートに連絡したところ、本人の死亡が発覚し、利用規約違反(アカウントの譲渡・貸与禁止)として全ての権利が剥奪された。多くのサービスでは、アカウントは「一身専属(本人のみ有効)」であり、相続できません。

3. 主要サービス別「解約・引継ぎ」攻略辞書

どうしても中身を確認したい、あるいは正規の手続きで解約したい場合のマニュアルです。

Apple (iCloud+, Apple Music)

  • 原則: Apple IDは相続できません。
  • デジタル遺産プログラム: 故人が生前に「故人アカウント管理連絡先」を設定していれば、アクセスキーを持った相続人がデータ(写真等)をダウンロードできます。
  • 設定なしの場合: 基本的にアクセス不能。死亡証明書等をAppleに提出することで、「アカウントの削除(全データ消去)」と「課金停止」は可能です。

Google (Google One, YouTube Premium)

  • 原則: 「アカウント無効化管理ツール」が生きていれば、指定された期間(3ヶ月等)放置後に相続人に通知が来ます。
  • 設定なしの場合: Googleに死亡証明書と本人確認書類提出し、審査に通れば、「アカウントの閉鎖」や「一部データの取得」が認められる場合があります。

Amazon (Prime, Kindle)

  • 原則: アカウントの共有は規約違反。
  • 対応: カスタマーサービスにチャットか電話で「契約者が死亡した」と伝えます。本人確認ができれば、プライム会費の解約・未経過分の返金(日割り)が行われます。Kindle本などの購入済みコンテンツは消滅します。

Microsoft (Microsoft 365)

  • 注意: OneDriveに重要書類がある場合が多いです。
  • 対応: クレジットカード停止による自然解約が最もスムーズですが、どうしてもデータが必要な場合は、裁判所の命令等が必要になるケースが多く、難易度が高いです。

4. プロが教える「隠れサブスク」発見のメール検索術

遺品のスマホやPCが操作できるなら、メールアプリ(Gmail, Outlook等)で以下のキーワードを検索窓に入れてください。驚くほど多くの「支払い通知」が見つかります。

キーワード 発見できる可能性があるサービス
"Thank you for your purchase" App Store, Google Playでの課金
"Receipt" / "Invoice" 海外サービス、SaaSツール
"自動更新" / "更新通知" ウイルス対策ソフト、レンタルサーバー、ドメイン
"ご登録ありがとうございます" ファンクラブ、オンラインサロン、メルマガ
"決済完了" 各種ECサイト、チケット予約、投げ銭

Warning: 特に「ウイルス対策ソフト(ノートン、マカフィー等)」は要注意です。1年更新や3年更新で契約していることが多く、忘れた頃に数千円〜1万円がドカンと自動引き落としされます。これらはクレジットカードを止めても、しつこく請求メールが来ることがあるため、サポートに連絡して明確に解約するのが無難です。


5. インフラ(電気・ガス・水道)の「ライフライン」戦略

デジタルだけでなく、物理的な住まいの契約も重要です。判断基準は「家をどうするか」で分かれます。

A. 「空き家」にする場合

速やかに解約の手続きを行います。

  • 重要テクニック: 冬場の寒冷地(北海道、東北、北陸など)では、「水道の凍結防止(水抜き)」のために電気を通しておく必要があります(給湯器の凍結防止ヒーターを作動させるため)。
  • 電気を完全に止めると、水道管が破裂して家が水浸しになり、資産価値がゼロになる大惨事が起きます。「アンペア数を最低(10A〜20A)に落として契約継続」が正解です。

B. 「住み続ける」場合

各社のカスタマーセンターへ連絡し、「承継(名義変更)」の手続きを行います。

  • 落とし穴: 故人の預金口座が凍結されると、引き落としができず、ある日突然電気が止まります(スマートメーターは遠隔で即遮断されます)。
  • 対策: 名義変更と同時に、必ず「支払い方法の変更(相続人の口座またはカード)」をセットで行ってください。

6. 【FAQ】生活サービス相続のサバイバル知恵袋

Q. 故人の「スマホの4桁パスコード」がわかりません。 A. 原則としてできませんが、例外もあります。 iPhoneやAndroidのセキュリティは強固で、ドコモやauのショップに行っても解除してくれません。「初期化(工場出荷状態に戻す)」しか対応策はありません。中の写真は諦めて、解約または承継の手続きを進めてください。

Q. マンションの「ネット回線」はどうすれば? A. 機器(ONU)の返却を忘れずに。 NTTフレッツ光、NURO光などを解約する際、レンタルしている「ONU(終端装置)」や「Wi-Fiルーター」の返却が必要です。遺品整理でこれをゴミとして捨ててしまうと、後から1万円〜3万円の「機器賠償金」を請求されます。箱がなければ、プチプチに包んで返送してください。

Q. 実店舗のある「スポーツジム」の会費が引かれ続けています。 A. 「来店」が必要です。 ネット完結のサービスと異なり、スポーツジムのエニタイムやコナミなどは、本人の死亡を伝えない限り「退会」扱いにならず、会費が発生し続けることがあります(未払いが溜まると督促状が来ます)。葬儀が落ち着いたら、早めに会員証を持って店舗に行き、死亡による退会手続き(場合によっては死亡診断書の提示)を行ってください。死亡月までの日割り計算で精算してくれる良心的なところもあります。


7. 結論:デジタル時代の「兵糧攻め」は正義である

一つひとつのパスワードを探し、ログインを試み、解約ボタンを探す——そんな徒労に時間を使う必要はありません。

まずは「決済手段(クレジットカード)」を断つこと。 それが、故人の遺産を無駄な固定費という「砂漠」に流出させないための、最大かつ最速の防衛術です。 カードさえ止めれば、9割のサブスクは勝手に消えていきます。

家の中の目に見えない契約が終わったら、次はさらに難解な「国営」サービスの整理。 NHK・新聞・ケーブルテレビ...解約しても返金されない「前払い金」の罠(Article 39) で、公共料金の着地点を見極めましょう。

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