故人が株式投資をしていたと分かっても、口座にあるのが現物株だけとは限りません。
信用取引、FX、先物・オプションなどの建玉(未決済のポジション)が残っている場合は、相続の考え方が大きく変わります。
最も重要なのは、相続人が故人のIDでログインして自分で決済しようとせず、できるだけ早く証券会社・取引業者へ死亡を連絡することです。
建玉はそのまま相続人の口座へ移せない場合がある
現物株式であれば、相続人が証券口座を用意し、株式を移管する形で相続できることがあります。
しかし、信用取引やFX、先物等の建玉は事情が違います。
楽天証券は、相続時のQ&Aで、信用取引とFXの建玉は相続人口座へ移管できないと案内しています。相続手続きの申込み後、建玉を反対売買で決済し、決済代金や保証金を相続人口座へ移管する取扱いです。
同社では、国内先物・オプション、海外先物も建玉決済の対象として挙げています。
SBI証券も、信用取引、先物・オプション、外国為替保証金取引の建玉は相続人口座へ移管できず、故人の口座で同社規程等に従って反対売買等による決済を行うと案内しています。
相続人が売るタイミングを自由に決められるとは限らない
「相場が戻るまで待ってから決済したい」と思っても、建玉では証券会社の規程やリスク管理が優先されます。
信用取引やFXは証拠金を使う取引です。価格が不利に動けば、追加保証金や証拠金不足、ロスカットなどが発生する可能性があります。
故人が亡くなったからといって、相場が止まるわけではありません。
そのため、相続人が売買判断を引き継ぐのではなく、死亡の連絡を受けた業者が規程に従ってポジションを処理するケースがあります。
なぜ早く連絡した方がよいのか
現物株だけなら、相続手続きに数週間かかっても保有数量そのものが変わるわけではありません。
建玉の場合は、その間にも価格が動きます。
たとえば、
- 信用買いの銘柄が急落する
- 信用売りの銘柄が急騰する
- FXが大きく変動する
- 先物が証拠金不足になる
といったことが起こり得ます。
決済結果によっては、相続財産として残る現金が想定より減ることもあります。損失が証拠金を超える場合などは債務の確認も必要です。
「遺産分割が決まってから証券会社へ連絡しよう」と待つより、建玉の有無だけでも早い段階で確認する方が安全です。
まず証券会社へ確認する項目
死亡を連絡するときは、次を確認します。
- 信用取引の建玉があるか
- FXの建玉があるか
- 先物・オプション等の建玉があるか
- 追加保証金・証拠金不足が発生していないか
- どの時点・方法で証券会社が決済するか
- 決済後の現金や保証金をどう相続するか
- 相続人側に証券口座の開設が必要か
業者によって商品や処理ルールは異なります。電話で「残高はいくらですか」だけを聞くのではなく、未決済ポジションの有無を明確に確認してください。
証券会社自体が分からない場合
故人が投資をしていたことは分かっても、取引業者が分からない場合があります。
株式等については、証券保管振替機構(ほふり)の「登録済加入者情報の開示請求」で、現在の口座管理機関を探せることがあります。ただし、ほふりではFXや先物などすべての取引口座を網羅できるわけではありません。
通帳の入出金、確定申告書、年間取引報告書、メール、郵便物なども確認してください。
詳しくはほふりで証券口座の開設先を調べる方法で説明しています。
AfterKeyの証券会社一覧と先物・商品取引一覧も、連絡先を探す際に利用できます。
税務上の処理は別途確認する
建玉の決済によって利益や損失が確定すると、相続税だけでなく所得税上の取扱いも確認が必要になる場合があります。
どの時点の取引として扱われるか、故人の準確定申告や相続人側の申告にどう影響するかは、商品や決済時期によって事情が変わります。
大きな建玉や損失がある場合は、証券会社の相続担当だけでなく税理士等にも確認してください。
最初の一手は「売買」ではなく「死亡の連絡」
建玉がある相続で、遺族が急いで行うべきことは相場を予想することではありません。
取引業者へ死亡を伝え、建玉と証拠金の状態、業者の決済ルールを確認することです。
ログイン情報が分かっていても、故人本人として注文を出すのではなく、正規の相続手続きに切り替えてください。
公式情報・確認先
この記事は2026年8月27日時点の公式情報を確認して作成しています。商品・会社ごとに取扱いが異なります。