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ゴルフ会員権の相続:「預託金」は返ってくる?売れない会員権の処分

バブル時代の「預託金」は全額返還されるのか。PGM、アコーディアなどの大手コース対応と、年会費だけかかる「負動産」会員権の損切り交渉テクニック。

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1. ゴルフ会員権相続の「光」と「影」:資産が負債に変わる瞬間

ゴルフ会員権は、昭和から平成初期にかけて「投資の王様」ともてはやされました。 当時は「株か、土地か、会員権か」と言われるほどで、1枚数千万円、時には億単位で取引されることもありました。

しかし、現代の相続において、ゴルフ会員権は「最も扱いに困る遺産」の筆頭株です。 名門コースであれば高値売却できる「資産」となりますが、多くのコース(特に地方)では売値がつかず、逆に年会費だけを請求され続ける「負動産(負債)」と化しています。

[Expert View] 「預託金(保証金)」の冷酷な現状

会員権証書(預り証)に「金1,000万円」と書かれていても、その価値を信じてはいけません。

  • 預託金とは: ゴルフ場建設時などに会員が預けたお金で、本来は退会時に返還される約束のものです。
  • カットと延長の罠: 多くのゴルフ場がバブル崩壊後に民事再生法(法的整理)を申請しており、預託金は「90%〜99%カット」されているのが常です。つまり1,000万円は10万円以下になっています。
  • 据置期間: 運よく経営が続いていても、「返還は退会から10年後」「理事会の承認が必要」といった特約で、事実上の返還拒否(塩漬け)が行われているケースが多発しています。

2. 【Case Study】「損切り」の速さが遺産を守った分かれ目

[Case Study 1] 早めの「退会・放棄」で年会費負担を回避した事例

父が千葉県のゴルフ会員権を3コース分持っていた。相場サイトを調べたところ、2コースは「売値ゼロ(買い手なし)」、1コースは「相場5万円」だった。

  • 結果: 5万円のコースは即座に業者へ売却。売れない2コースについては、ゴルフ場へ内容証明郵便を送り、「これ以上の年会費の支払いは拒否する。預託金の請求権も放棄するので、今すぐ退会(除名)させてほしい」と粘り強く交渉。結果として「将来掛かるはずだった年会費(年10万円×2)」をゼロにしたことで、賢明な損切りに成功した。

[Case Study 2] 放置した結果、10年分の年会費が借金になった事例

「父の思い出があるから」「いつか値段が戻るかも」と、会員権を10年間放置。もちろん一度もプレーはせず、ゴルフ場からの「年会費請求書」も開封せずに捨てていた。

  • 結末: 10年後、ゴルフ場から委託された債権回収会社から、「滞納年会費+遅延損害金 80万円」の支払督促が裁判所経由で届いた。裁判所からは「会員規約に基づき支払義務がある」と認定され、多額の現金を支払う羽目になった。「会員である以上、死後も契約は継続し、支払い義務は相続される」という厳しい現実です。

3. 相続人の3つの選択肢:ベストな着地点を探る

会員権証書が見つかったら、以下の優先順位で処理を検討してください。 まず「ゴルフ会員権ネット」や「明治ゴルフ」などの相場情報サイトで、そのコースの名前を検索します。

1. 売却(市場換金)

「売り」希望が出ており、「買い」希望も入っている場合。

  • 最も合理的でクリーンな方法です。専門業者(会員権取引業者)に仲介を依頼します。
  • 税務処理: 売却益が出れば譲渡所得ですが、多くの場合は「売却損」が出ます。この売却損は、給与所得等と損益通算が可能です(※ただし制度改正により通算不可のケースも増えているため、税理士確認必須)。

2. 名義書換(相続してプレーする)

家族(配偶者や子)がゴルフをする場合、会員権を引き継ぎます。

  • コスト: 相続による名義変更には、通常「名義書換料(10万〜100万円)」がかかります。
  • メリット: 一部のコースでは、相続時の書換料を半額や無料にするキャンペーンを行っている場合があります。

3. 退会・権利放棄(損切り)

相場がつかず(買い手不在)、誰もプレーしない場合。

  • ゴルフ場に連絡し、退会を申し出ます。
  • ハードル: 「年会費の未納分を払わないと退会させない」と言われることがあります。さらに、「預託金の返還は応じられない」と言われることもあります。
  • ゴールの設定: 「お金が戻ってくること」を期待せず、「これ以上の年会費を払わなくて済む状態(=除名)」にすることをゴールと設定し、権利放棄書にサインをするのが、実務上の最善策となることが多いです。

4. プロが教える「ゴルフ負債」の問い合わせスクリプト

売れない会員権を処分するための、ゴルフ場事務局との電話交渉術です。

あなた: 「父が亡くなりました。会員権を相続する意思はありませんので、退会させていただきたいです。」

事務局: 「承知しました。では未納分の年会費(今年度分)をお支払いいただいた上で、退会届を出してください。預託金の返還は、現在停止しております(または抽選制です)。」

あなた: 「預託金(証書にある100万円)については、返還請求権を全て放棄します。その代わり、未納年会費についても相殺(免除)していただけませんか? これ以上請求されるようであれば、相続放棄も検討しなければならず、そうなると御社にとっても事務手続きが煩雑になるかと思います。」

  • 解説: ゴルフ場にとっても、死んだ会員を名簿に残しておくのは管理コストの無駄です。「預託金を捨てるから、年会費もチャラにしてくれ」というバーター取引(手打ち)は、多くの現場で暗黙に行われている解決策です。

5. 大手グループ(PGM・アコーディア)の対応

日本のゴルフ場の多くは、現在この2大グループの傘下にあります。対応はシステマティックです。

  • PGM(パシフィックゴルフマネージメント):
    • 預託金: 比較的柔軟に対応する傾向があります。額面通り(または一部カット後)の金額が返ってくるケースもあります。
    • P-CAP: 相続人が入会する場合の優遇プログラムが充実しています。
  • アコーディア・ゴルフ:
    • ロックアップ: 過去の経緯から、預託金の返還には非常に厳格、あるいは事実上不可能なコース(旧経営時代の負債)が多いです。
    • 売却: 人気コースも多いため、市場での売却(換金)が成立しやすいのが特徴です。

6. 【FAQ】ゴルフ会員権相続のサバイバル知恵袋

Q. 証券(紙)が見当たりません。 A. 再発行には多額の手数料がかかります。 証券は有価証券扱いなので、紛失した場合、新聞に無効公告を出すなどの手続きが必要になり、5万〜10万円の手数料と数ヶ月の期間がかかることがあります。まずは徹底的に探してください。コースによっては「念書」だけで退会処理してくれる場合もあります。

Q. 故人が「株主会員制」のコース会員でした。 A. これは「財産」の可能性があります。 会員が株主となってゴルフ場を所有する形式(小金井カントリーなど)は、資産価値が非常に高く保たれていることが多いです。また、これらは解散時に残余財産の分配を受けられる権利が強いため、安易に放棄せず、必ず時価評価を行ってください。

Q. 「未納年会費」は相続放棄すれば払わなくていいですか? A. はい、払わなくていいです。 相続放棄(Article 16) をすれば、プラスの財産(預託金請求権)もマイナスの財産(滞納年会費)も全て消滅します。ゴルフ場からどれだけ督促が来ても「相続放棄しました」で終了です。ただし、他の遺産(自宅など)も放棄することになるため、ゴルフ会員権単独のために相続放棄をするのは最終手段です。


7. 結論:会員権は「趣味」ではなく「契約」である

ゴルフが好きだった故人にとって、その会員権はステータスであり、仲間との思い出の証だったでしょう。 しかし、ひとたび主(あるじ)を失えば、それは「コース維持管理費を払い続ける契約書」という法的リストになります。

「いつか誰かが使うかも」という曖昧な保留が、一番の損失を生みます。 使うなら名義を変える。使わないなら手放す。 グリーン上のパットと同じく、「決め打ち」こそが、会員権相続の極意です。

緑の資産に決着をつけたら、次はさらに厄介な「リゾートの権利」。 リゾート会員権(エクシブ・東急ハーヴェスト)と別荘管理費の解約(Article 44) で、出口の見えない「負動産」リスクの最終防御壁を学びましょう。

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