結論からいうと、通帳やキャッシュカード、銀行印が見つからなくても、銀行の相続手続きができなくなるわけではありません。
相続では「本人が亡くなっていて、申出人が相続人等であること」を戸籍などで確認して進めるのが基本です。通帳やカードは口座を特定したり、最終的に回収したりするために提出を求められることがありますが、紛失時の扱いを用意している銀行もあります。
三菱UFJ銀行も相続の必要書類として通帳、キャッシュカード、貸金庫の鍵などを挙げたうえで、紛失している場合は申し出るよう案内しています。
最初に確認したいのは「どの銀行か」
通帳がない場合、まず困るのは口座番号よりも銀行そのものが分からないケースです。
次のようなものが手掛かりになります。
- 給与・年金・配当金などの振込通知
- 公共料金やクレジットカードの引落先に関する書類
- ATM利用明細
- 銀行から届いた郵便物
- 税金の還付・納付関係書類
- スマートフォンやパソコンの銀行アプリ名
- 家計簿、エンディングノート
銀行名が分かったら、AfterKeyの銀行一覧で相続窓口や必要書類を確認できます。
口座番号が分からなくても相談できる
「銀行は分かるが、支店や口座番号が分からない」という場合もあります。
たとえば三井住友銀行は、亡くなった方の口座の有無や残高が分からない場合は店舗へ直接相談するよう案内しています。電話だけで口座情報を回答するわけではなく、死亡の事実や手続きする人が相続人等であることを確認できる書類が必要になります。
銀行によって照会方法や対象取引は異なります。「全店照会」「名寄せ」と呼ばれることもありますが、どの銀行でも同じ名称・同じ範囲で照会できるとは限りません。
生前にマイナンバーを付番していれば「相続時照会」が使える
2025年4月から、預貯金口座付番制度の仕組みを使った相続時照会が利用できるようになっています。
故人が生前、預貯金口座へマイナンバーを付番していた場合、法定相続人または包括受遺者が任意の金融機関で申し込むことで、一部の対象外金融機関を除き、故人のマイナンバーが付番されている預貯金口座の所在をまとめて確認できます。
ポイントは次のとおりです。
- 相続人が複数いても、いずれか1名で申し込める
- 故人のマイナンバーそのものは申請時に不要
- 故人の氏名・住所・生年月日を確認できる書類と、法定相続人等であることを確認できる書類が必要
- 手数料が必要
- 死亡後10年まで照会可能
- 結果は預金保険機構から郵送される
- 対象は「マイナンバーが付番された口座」であり、未付番の口座まで万能に探せる制度ではない
つまり、以前のように「全国の銀行を一括で探す方法はない」とは言い切れなくなりました。ただし、故人が生前に付番していなかった口座や対象外金融機関は漏れる可能性があるため、郵便物や通帳等による調査も引き続き必要です。
銀行印がない場合
故人が生前使っていた届出印が見つからなくても、相続手続きでは相続人側の実印と印鑑証明書などを使って手続きするケースが一般的です。
ただし、必要な署名・印鑑は次の事情で変わります。
- 遺言書があるか
- 遺言執行者がいるか
- 遺産分割協議書があるか
- 法定相続人全員で共同相続するか
- 承継する人が確定しているか
たとえば三菱UFJ銀行では、遺言書も遺産分割協議書もない共同相続の場合、法定相続人全員の署名・実印による捺印と印鑑証明書などを案内しています。一方、遺言や遺産分割協議で承継人が明確な場合は必要な署名者が変わります。
「故人の銀行印がない」ことと、「相続人の印鑑証明書が不要」ということは別です。
キャッシュカードで引き出してしまう前に銀行へ
暗証番号を知っていても、亡くなった後に故人名義のカードを使ってATMから現金を引き出すのは避けた方が安全です。
相続財産を一部の相続人が勝手に動かすと、後の遺産分割で説明が必要になったり、相続放棄を検討している場合には特に慎重な判断が必要になったりします。
葬儀費用などですぐ資金が必要なときには、一定の条件で相続人が単独で払い戻しを求められる遺産分割前の預貯金払戻し制度があります。詳しくは遺産分割前の預貯金の仮払い制度で解説しています。
口座を見つけた後の流れ
一般的には次のように進めます。
- 銀行へ死亡の連絡・相続手続きの申出をする
- 必要書類と手続き方法の案内を受ける
- 戸籍または法定相続情報一覧図などで相続関係を確認してもらう
- 遺言・遺産分割の状況に応じた相続書類を提出する
- 払戻し、名義変更などを行う
通帳・カードが見つからない場合は、最初の連絡時にその旨を伝えてください。再発行してから相続するのか、紛失扱いのまま相続手続きを進めるのかは金融機関によって異なります。
「何もない」場合でも、諦めるのは早い
ネット銀行では紙の通帳をそもそも発行していないこともあります。亡くなった方の持ち物だけで口座の有無を判断すると、見落とす可能性があります。
生前に預貯金口座へマイナンバーを付番していた可能性があれば、相続時照会を先に確認する価値があります。それで見つからない場合も、郵便・引落し・給与や年金・税務書類などから銀行名を拾い、候補を一つずつ確認する方法は残ります。
相続時照会も対象を100%保証する制度ではないため、複数の方法を組み合わせるのが安全です。
公式情報・確認先
この記事は2026年8月27日時点の公式情報を確認して作成しています。必要書類は銀行や相続の状況によって異なります。