🔰 基礎知識

親族が亡くなった時の手続き完全ガイド:優先順位とタイムライン【2025年最新版】

「何から手をつければいい?」葬儀、役所、銀行、デジタル遺品まで。遺族が直面する100以上の手続きを、優先順位と法的期限別(7日・14日・3ヶ月・10ヶ月)に完全網羅した保存版マニュアル。

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突然のことに慌てないために:カオスを制御する「羅針盤」

大切な家族が亡くなると、深い悲しみの中でも、役所や銀行、保険会社などへの膨大な手続きが津波のように押し寄せます。 「何から手をつければいいのか?」「期限はあるのか?」「遅れるとどうなるのか?」

この混乱期において最もリスクが高いのは、「やるべきことの全体像が見えていないこと」です。期限を1日過ぎただけで数千万円の借金を背負うことや、数百万円の節税機会を逃すことは、決して珍しい話ではありません。

本記事では、相続手続きの全体像をタイムライン順(死亡直後〜10ヶ月後)に整理し、優先順位を明確にまとめました。このページをブックマークし、一つずつチェックリストを消化していくことで、確実にゴールへと進むことができます。


1. 【超緊急】死亡直後〜7日以内:初動のミスが後を引く空白の1週間

葬儀の準備と役所への届出は、時間との戦いです。特に「死亡診断書」の扱いは、その後の全ての手続きの効率を左右します。

🚨 死亡診断書(死体検案書)の「原本」は手元に残らない

医師から受け取る「死亡診断書(原本)」は、世界に一枚しかないパスポートのようなものです。 しかし、役所に火葬許可をもらうための「死亡届」として提出すると、原本は回収されてしまい、二度と戻ってきません。

  • 【鉄則】: 役所に走る前に、必ずコンビニ等で最低10枚、できれば20枚コピーをとってください。
  • 用途:
    1. 銀行口座の凍結解除・名義変更
    2. 生命保険金の請求(※原本還付できる場合あり)
    3. 未支給年金の請求
    4. 健康保険証の返却・葬祭費の請求
    5. 不動産の名義変更(相続登記)
    6. 自動車の名義変更・廃車
    7. 携帯電話の解約
    8. クレジットカードの解約
    • Note: 病院への再発行依頼は可能ですが、1通につき3,000円〜10,000円の手数料がかかり、時間もかかります。コピー代10円で済ませることが最初の節約です。

📋 [Checklist] 7日以内に完了させるべき手続き

  • [ ] 死亡届の提出: 死亡を知った日から7日以内(国外の場合は3ヶ月以内)。
  • [ ] 火葬許可証の取得: 死亡届と同時に申請します。これがないと葬儀(火葬)ができません。
  • [ ] 世帯主変更届: 世帯主が亡くなり、残された家族が2人以上いる場合、14日以内に提出が必要です。
  • [ ] 年金の受給停止手続き: 厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内。
    • Risk: 放置すると年金が振込され続け、後日一括返還を求められるだけでなく、悪質とみなされると詐欺罪に問われるリスクがあります。

2. 【早期】14日以内:生活基盤の「インフラ整理」と法的効果

葬儀が終わり、少し落ち着いたタイミングですが、ここでの手続きが遺族の今後の生活資金を左右します。

🏥 健康保険・介護保険の資格喪失と「葬祭費」

これらは自動的には止まりません。役所の窓口へ行き、以下の手続きを行います。

  1. 健康保険証の返却: 死亡日の翌日で資格喪失します。
    • 扶養家族の注意点: 会社員の夫の扶養に入っていた妻は、夫の死亡により保険証が使えなくなります。速やかに「国民健康保険」への加入手続きをしないと、無保険期間が生じ、医療費が10割負担になるリスクがあります。
  2. 利用料の精算: 高額療養費の還付金がある場合は、振込先口座を指定します。
  3. 葬祭費(埋葬料)の請求:
    • 国民健康保険加入者:3万円〜7万円(自治体による)
    • 社会保険(会社員)加入者:5万円(埋葬料)
    • Advice: 領収書(宛名が申請者となっているもの)が必要です。葬儀社の領収書は捨てずに保管してください。請求期限は2年ですが、役所に行ったついでに済ませるのが鉄則です。

🏦 公共料金・インフラの名義変更

  • 電気・ガス・水道: 故人名義のままだと、銀行口座凍結により引き落とし不能となり、ライフラインが止まります。
  • NHK受信料: NHKの解約・免除手続き(Article 39) を参照。
  • 携帯電話: 解約にはショップへの来店が必要なケースが大半です。SIMロックや2段階認証の壁があるため、解約前に必要なデータ(写真など)を退避させてください。

3. 【資産調査】金融手続きの「三段階突破」と「タンス預金」

ここからが本当の戦いです。故人の全財産を把握し、「プラス」か「マイナス」かを確定させるフェーズです。

金融機関の手続き難易度レベル

  1. Level 1:ゆうちょ銀行・地銀
    • 窓口があり、対面で相談可能。通帳があればなんとかなります。
  2. Level 2:ネット銀行・ネット証券
  3. Level 3:暗号資産(仮想通貨)・海外口座
    • 秘密鍵の損失(Article 32) は致命的です。最悪の場合、資産が存在することさえ証明できず、永遠に闇に消えます。

💡 専門家が警告する「タンス預金」のリスク

「銀行に入れると税務署に捕捉されるから」と、自宅に現金を隠しているケースがあります。

  • 税務署の視点: KSK(国税総合管理)システムにより、故人の過去10年間の収入と銀行出金履歴は丸裸です。「引き出したはずの3,000万円が、預金残高にも不動産購入履歴にもない。使った形跡もない。なら自宅にあるはずだ」と推測され、調査官が家にやってきます。
  • ペナルティ: 申告漏れが見つかると、本税に加え、過少申告加算税、さらに悪質な場合は重加算税(最大40%)が課されます。「正直に申告する」ことが、結果的に最も安いコストで済みます。

4. 【法的期限】取り返しがつかない「3・4・10」の法則

相続手続きにおいて、絶対に守らなければならない3つの「デッドライン」があります。これらは1日でも過ぎると法的権利を失います。

① 【3ヶ月以内】借金からの脱出「相続放棄」

もし故人に多額の借金があった場合、相続人は「プラスの財産もマイナスの借金も全て放棄する」ことができます。

  • 期限: 「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内
  • 注意: この期間内に、故人の預金を使ったり、車を売却したりすると「単純承認(相続する意思がある)」とみなされ、借金の放棄ができなくなります。相続放棄の判断基準(Article 16) を熟読してください。

② 【4ヶ月以内】故人の最後の決算「準確定申告」

故人が自営業者であった場合や、年収2,000万円以上の給与所得者、または年金受給者(年間400万円超)の場合、1月1日から死亡日までの所得を計算し、申告・納税する必要があります。

  • 医療費控除: 生前に支払った多額の入院費がある場合、準確定申告を行うことで税金が戻ってくる(還付)可能性があります。

③ 【10ヶ月以内】相続税申告と納税

これば相続手続きのゴールラインです。

  • 対象者: 遺産の総額が「基礎控除額(3000万円 + 600万円×法定相続人の数)」を超える場合。
  • ペナルティ: 1日でも遅れると、納税額に対して自動的に延滞税がかかります。また、「配偶者の税額軽減(1億6000万円まで無税)」や「小規模宅地等の特例(土地の評価額80%減)」といった強力な節税特例が使えなくなります
  • 未分割申告: もし遺産分割協議がまとまらない場合でも、一旦「法定相続分で分けた」と仮定して申告・納税を済ませる必要があります。

5. 【FAQ】現役の相談員が答える現場の本音

理屈はわかっても、現場では迷うことばかりです。よくある質問に答えます。

Q. 葬儀費用を故人の凍結口座から払いたいのですが? A. 2019年の法改正で「仮払い制度」ができ、一定額(上限150万円等)まで引き出し可能になりました。しかし、それが「葬儀費用」として認められるかどうかは別の話です。過度に豪華な葬儀や、香典返しの費用などは、後で他の相続人から「使い込みだ」と訴えられるリスクがあります。領収書は1円単位まで保管し、誰が見ても納得できる使途であることを証明できるようにしてください。

Q. 戸籍集めは自分でできますか?それとも司法書士に頼むべき? A. 故人が若く(転籍が少なく)、本籍地が近くにあれば自分でも可能です。しかし、「兄弟姉妹が相続人になる場合」「数次相続(相続人が手続き中に亡くなった)」が発生している場合は、戸籍の量が膨大になります。

  • 目安: 役所への郵送請求が3往復を超えたら、プロ(司法書士・行政書士)に依頼した方が、時間コストを考えると安上がりです。特に 職権請求 というプロ特権を使えば、一般人よりも早く正確に取寄せ可能です。

Q. 遺品整理で出てきた「借用書」はどうすれば? A. 個人間の金銭貸借も相続対象です。「貸している」なら債権(プラス)、「借りている」なら債務(マイナス)です。相手方が音信不通の場合も多いですが、勝手に破棄してはいけません。回収不能と判断された場合でも、その証拠を残すことで相続財産の評価減に使える可能性があります。


結論:あなたの「次の1歩」を決定する

相続という長い旅の始まりにおいて、最も大切なのは「俯瞰図(全体マップ)」を持つことです。 本記事で全体像を把握したら、次はあなたの家庭に特有のリスクを特定し、個別記事で深掘りしてください。

迷ったら、まず ドキュメントチェックリスト(Article 04) を開き、手元にある書類を整理することから始めましょう。準備8割、実行2割です。

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相続のプロ
解説をお読みいただきありがとうございます!
全体の流れがつかめたら、次は実際に手元にある通帳やカードの手続きに進みましょう。
各金融機関ごとの必要書類や窓口情報をまとめてあります。

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